トワイライトな旅路その1


スペック
 同行者:最近のカメラ市場縮小傾向を憂うフィルムカメラ愛好家。デジカメ二台とフィルムカメラ一台持参。仮にケイとする。
 ワシ:最近やっぱりおやかんがいとおしくてたまらないテツ分若干あり。さすがにおやかんは持ち込んでいないが素敵おやかんを探したい。
 補足:どちらも大概変人。

トワイライト行程:2008.3.8 12時大阪駅発〜2008.3.9 9時7分札幌着
その後行程:札幌〜小樽〜札幌(一泊)〜新千歳〜(飛行機)〜神戸空港

<薄暮急行縁起>
 そもそもの始まりは2008年一月始めごろに、E坂の某肉屋で差し向かいステーキをかっくらってた時の会話。
「なんか逃避したい逃避。と・う・ひ。頭にアラズ」
「遠くへ行くべし」
 この時点で既にどちらも病である。特にどうするか具体的にはほとんど決まっていなかったがこの会話のせいでとにかくどこかに行くことにはなった。
 1月21日に、何が理由か忘れたがトワイライトエクスプレスという存在を思い出しなんとなくググってみる。実家は関西圏には入るが大阪ではないので遠い世界の存在だと思って記憶の片隅に追いやっていたが、今考えてみると大阪在住じゃないか。しかしいけないだろうなぁ、一回ぐらいは話の種に乗ってみたいなぁ。で、らくがきをしたのがこの日。それをケイ(変)が見て、
「じゃ、どうせ時間はあるし予約取りに行くから出発日を決めやがれ(脚色)」
 と電話がかかってきた。ネタだってば。まあどうせ予約取れるはず無いよ、がんばってみるんだなアッハッハ(脚色)という感じで2/8が来た。
 一月前が予約開始の日になる。資金とかもどうするかなぁ、取れてから考えようということで私は朝から普通に仕事。ケイ(根性)は朝の7時からJR大阪みどりの窓口にて座り込み運動。

 日付:08/02/08 10:23
 題名:トレタ
 本文:(°A°

 返信:マヂデツカ

 塩ご飯決定の瞬間であった。

 で、合計12区間を通り過ぎる超長距離路線。当然お天気で運休もありうる路線で、この時期だと東北の吹雪で止まることも多々あるらしい。なのであんまり大々的に言えずにもそもそとひっそり飯を食う生活が続く。
「とりあえず北海道だけど何するか決めといて」
 のケイ(漢)の言葉に
「マンドクセ('A`)」
 で返すと怒られた。仕方なく本屋さんに行くが、見ているとなんかおかしいぞ。悩むこと五分、ロードマップを見ていた。そりゃおかしい。地図には変わりないが。月末進行間際の仕事疲れ頭はよろしくない。いろんな意味で。
 三月に入りどうやら天気もいいということでサイトでも出かけることを告知。というか、「トワイライトロゴ with 帝国コンビ」が描きたくて仕方がなかったというのが正しい。私を構成するのはおやかんとニャンコと茶とネタである。

<始まりは事故でサンダーバード一本運休から>
 何だかんだで寝れず、部屋を出るのが10時半だが10時くらいまでゑを描いていた。その後30分で出発準備。一応X染色体もちだが通常のX染色体もちがする行動をほぼしないので荷物は少ない。いつもの調子でブラリ大阪まで。地下に下りて画材屋で五号筆を購入してからそのままJRに接続する。いやー、ちょうどいい筆が無かったので、どうせ通り道になるからと買いに行ったわけだ。そう、一度はやってみたかった、スケッチの旅路。移動することが目的でなければ絶対にできない旅の一つ。どこまで描けるかわからないが、とりあえず直前に新しくスケッチブックを買ったのはこのためだった。
 大阪駅、特急は大体十番ホームから出る。金沢行った時も高山行った時もそこからサンダーバードで出かけた。人より早めに行って待っているのが好きなので、一本前の雷鳥に乗れるとかもザラ。が今回、その日は昼に一本しか出てないから、とりあえず前に止まっているサンダーバードが客乗せてる頃にはついた。

 ケイ(テツ)が
「そういえば十番は(進行方向に対して)左側の戸が開くように付いていたのに工事のせいだろうか」
と言い出す。
 つまり、

     線路
   ______
   十番ホーム
 
   九番ホーム
   ______

     線路

 じゃなくて
 
   十番ホーム
   _____

     線路
   _____
   九番ホーム

 だったという話。聞いた時は軽くスルーしたが、そういや前に使った時は確かに左側が開いた気がする。そんなことは、電光掲示板にようやく現れた「特急トワイライトエクスプレス 札幌」の文字に飛んでいった。正午発のはずが、北陸線のどこかで事故がありちと遅れて12時3分発。影響で直前のサンダーバードは運休になっていた。

 これみてやっと旅に出る気になった

 先のサンダーバードが出発して(ケイ(きっとテツ)は写真撮ってた)しばらくしてアナウンスが入る。トワイライトエクスプレスの到着だ! わけも無くワクワクし始める。何せ予約とってもらってケイ(偽暇)と顔を合わす暇が無く、メールで切符写真は送ってもらっていたが手元に無い。どうにも旅行に出かける気になっていなかったのがようやくテンションアップ。緑の制服な車掌さんも現れて、近くの父子連れが写真頼んでいるのをほほえましくみていたら深緑の車体とご対面。
「とりあえずヘッドマーク撮ってくるから荷物を見てろ」
 とお願いしつつ先頭へ走る。既に人だかり、皆一緒か。電源荷物車を思わず写真に撮ってたらケイ(撮りたい)が切なそうにこちらを見ている。仕方がないから荷物見てるわよええと戻ると嬉々として飛んでった。

 ロゴ可愛い可愛い。惚れてますv


 中身が気になった電源荷物車


 車両にもでっかく

 ちょうど先頭に近いところで待っていたのでB寝台の4人一組な車両が目の前にあった。実は寝台列車自身が生まれて初めての経験。一体どんなもんなんだろうとどきどき。
 途中車体のロゴマークを幾つか撮影しながら後ろの車両へ。二号車A寝台、ロイヤルルームが予約取ったところ。A寝台は旅行会社がやっぱり買い占めていることが多く、かなり取りにくいということを後から知った。駄目元上等行き当たりバッタリで予約取れちゃったよw 
 部屋に入るとそうだなぁ、四畳半くらいの大きさはあるだろうか。ランプが小さいテーブルに備え付けられていて、このランプがあるからスイートじゃなくてロイヤルにしたそうだ(ケイ(気遣い)談)。ハイ、ワシのせいです(笑)。ランプ好きですw 窓はとにかく大きい。大阪駅だと工事中だから防音壁しか見えないのだがでかい。壁は木目調。年季入った、椅子と机がくっ付いてる式な大学講堂っぽい(何)。が、列車の中ということを考えると破格じゃなかろうか。
『ほへー』(入った二人の第一声)
 どこの田舎者だ。


 室内事情その1。夜にようやく撮ったw


 室内事情その2。


 室内事情その3。天井灯。

 私が備え付けの椅子に座ってそそくさとスケッチブックその他お絵かきセットを出す。ケイ(感動)は可動式のソファーに座って外を見る。このソファーは入り口のスイッチでベッドに変わる。
 ようやく動き出して景色が流れ出した。とくにお絵かきするわけでもなく私も外を見る。決して見慣れていないわけじゃないのに妙に心が昂ぶっていた。
「……このまま新大阪で降りても十分じゃね?」
「かもしれん。降りるか?」
「いや半分冗談」
 結局半分本気じゃないかケイ(ヘタレ)よ。大阪-新大阪間は短い。言ってるうちに新大阪についたので、半分本気なら降りろと言ってみたらやっぱり乗ると返事があった。ちっ、優雅で怠惰でセクシィな列車の一人旅を満喫しようと(略)。
 そうこうするうちに来訪。ウェルカムドリンク、夕食、起き抜けの紅茶かコーヒー選択、朝食の時間を確認。ウェルカムドリンクは赤白ワイン一本ずつ。昼間から酒を飲むのはそんなに好きではないが、それは現実で日常を繰り返さないといけないタイミングで酔っ払われるのが嫌いなだけで、非現実の時には問題ない。夕食は乗車券購入時に予約済みでフレンチコース、時間は19時30分より。起き抜けはケイ(豆)がコーヒー党なのでそれにあわせる。朝食は7時15分から、これまた洋食和食を一人ずつ。ちょっとしたホテルより凄くね? 
 京都につくまでに上りのトワイライトとすれ違う。確かこの辺は新幹線と私鉄とJRが併走する辺りで、たまに一番遅いはずの私鉄特急が一番早いという謎な現象が起きる。新幹線は京都まですぐだから本領発揮してないのかなぁということでいつも納得する、ちょっと理不尽な場所(笑)。
 京都に到着。普通に在来線のホームに……って、中央改札のどまん前に止まりよったぞ! スモークガラスだから中見えてないけど思いっきり意表を突かれた。そういえば一時期ネットのあちこちでかかれてた「そうだ京都行こう」のフレーズ。確かJR東日本のCMだった気がするのだが、あれ関西では全く流れていなかった。だって京都ったって、自分が住んでるところだったら嵐山まで一時間弱のコースなので、全くもって特別じゃない。仕事帰りに電車乗り過ごしたらいけるところ(笑)。いや、それはまだやったことないが。

 滅多に撮れませんこんな構図。

 でもって車掌さんが部屋の説明にやってきた。
「以前にご乗車されたことはありますか?」
 ないない、初めてです。そしたら丁寧に説明してくれた。その間、珍しい草色の制服を凝視中なワシ。そんなバカの耳に飛び込んできた、
「あれを押されますと列車が止まりますので……」
 指差したその先には「SOS」のマークが! こっ……! これぞ漢の浪漫「自爆ボタン」! 押したいぞ。ウッカリやりたいぞ。車掌さんが去っていってからもう気になるの気にならないのって、これに関しては降りるまで気になった。ソファーでウッカリ足伸ばすと絶対触るって。オソロシイ。いや、すぐ押せないところにあるSOSボタンは意味が無いけど、それにしても……出っ張ってるし、「押してくれ」といわんばかりの後光が差して見えた(眼科行け)。
「車掌さんに迷惑だし、あとのダイヤ全部乱れるからお願いだからヤメレ」
 とケイ(懇願)が言うので好奇心は抑えた。

 押せなかったから撮る


<揺れる自堕落部屋ゴロゴロ>
 車掌さんも来た事だし、とりあえず昼飯でも食べに食堂車へ行くか。お隣が食堂車「ダイナー・プレアデス」。プレアデス星団かぁ。星の名前って素敵。適当に座って、私がハンバーグ、ケイ(ハラヘリー)が北海道海産物なシチュー。食べているうちに湖西線に入り、進行方向右側に琵琶湖が見え始めた。自分たちが座っているテーブルとは逆側なので少し残念だが、傍の窓からはまだ雪が残っている山が見えた。むしろ水平線だけの右側窓より変化のある左側窓の方がいいのかも知れん(笑)。乗車する時の父子連れが近くのテーブルに座っていて、お父さん楽しそうだった。子どもは少し飽き気味。
 美味しく頂いた後は車内探検。これをしないとウソだ。食堂者を逆側に出て行ってサロンカーへ到達。結構盛況。でもここで止まっていたら、果て無き謎は解明されぬと気を取り直して前進あるのみ。七号車あたりにちょっとしたサロンがあったのでそこで休憩。それから先はB寝台コンバートで、四人一組の、寝台列車ありがち構造になる。しばし何もしゃべらずにぼんやりと座り、思い出したように戻り始める。
 ちょうどサロンカーで車内販売のおばちゃんがいた。ケイ(興味津々)が買い物をするということで、いい感じに席も空いたのでサロンカーに座り込み。おばちゃんに見本写真を見せてもらいながらああでもないこうでもないと、結局選んだのは、

 ケイ(記念):スポーツタオル、キーホルダー
 ワシ(おやかん):キーホルダー

というところ。ちなみにキーホルダーはアパートの鍵にくっ付けた。テーブルウェアが欲しいと思うものの、皿五枚とか一人暮しには必要ない。ティーカップは実際使ってみて感触を確かめるべし。レターセットを買おうと思ったが、見本を見ると部屋に備え付けられていた便箋封筒絵葉書のセットと全く同じなのでやめたという。
 その後多分敦賀市に入るころくらいまで無意味にしゃべり倒していた気がする。途中でおばちゃんたちの集団に巻き込まれつつ、それもまた良しということでやっぱりおしゃべり。この時点でキンキンに冷えていたワインはとっくに温くなっていた。そう、まだウェルカムドリンクを飲んでいなかった。さすがにすきっ腹にアルコールは駄目ですよ。ただでさえ移動している空間の中にいるんだし、リバースした日には嫌過ぎる思い出になります。
 あと、車内に時計がほとんど無かった。ご飯開始とかそういうのは全部アナウンスしてくれるし、デジタル時計が例の自爆ボタン横にある程度で、どこにも時計はかかってなかった。よく私が口にする「時計の無い休日の日暮れまで」というやつだろうか。休日で、そんな豪華寝台特急の中でまで時計に追い立てられたくない。

 ようやく昼ご飯に出てから部屋に戻ってきたのが三時前くらい。お昼に出たのが一時前で、どっちも比較的早メシ食いなのでそれほど昼食には時間を使っていない。てことはニ時間ぐらい何してたかわからん勢いでいた模様。非現実万歳。この辺で乗車券をまじまじと眺めた。通る区間の記載があるのだが、小樽線と函館線が手書き。どうもスペースに印字できないから手書きになるようで。今更ながらに超長距離を実感。確か1500キロだったっけな。
 で、酒を飲み交わしながら私は部屋の中のスケッチを始める。ケイ(きくばり)がおつまみを持ってきていたのでそれを口に放り込みながら。ケイ(謎)がなにやら鞄を漁って取り出す。よく見るとスピーカー。
「何する気だべ?」
「音楽聞く」
 ……そりゃー、スピーカーは音を出すもんだからして……。携帯用のオーディオプレイヤーをスピーカーに接続して音楽を奏で始めた。一応部屋には音楽放送とDVD鑑賞用モニタは壁に埋め込まれているが、なるほどそれだとより一層自分の部屋にいる感じがする。で、流れてきたのがエースコンバット5、6、ゼロ。……殺伐としてる感じがひしひしと。いや、大好きだけど。結構聞く音楽にてる部分あるから、自分のオーディオプレイヤーに入っているのと被る被るw
 と、また来訪者。おや車掌さん、何用ですか?
「トラベルセットをお持ちしました」
 そういえば先に来てくれた時に後で持ってきますと言ってたなぁ。二時間も空けちゃった。布製の専用ポーチに歯磨き歯ブラシシャンプーコンディショナーに乳液、シャワーキャップ石鹸ときて櫛。男性用のシェービングローションまで資生堂製がセット。まあ無難なところかな。専用ポーチはそうだね、大阪近郊なら例の海老茶電車をもう少し綺麗にした感じ。電車だと異様を誇るがポーチだと結構綺麗。光沢アリ。ついでに言うとこれも車内のみで販売アリ。というか写真撮った。

 これは帰宅してから。戦勝品の数々。
 便箋&封筒、スリッパ、キーホルダー、トラベルセットに絵葉書二枚。

 金沢で少し長く(といっても四分程度)停車ということを聞き、浮かれた二人は寛ぎ仕様のままで北陸のホームに飛び出す。たしか待ち合わせじゃなかったっけ。私は最後尾車両になんとなく乗ってそのまま自分たちの部屋に戻るが、待てど暮らせどケイ(ロスト)が帰ってこない。一体何してるんだ、置いていかれたか? 置いてかれたらこの部屋独り占めさへっへっへと考えてたところにお約束で帰還。
「いや、慌ててサロンカーに飛び乗って、夕食のミーティングをしているプレアデスを通過するハメになっちゃった」
 こ、こいつは……。カメラもいいが(当然もって飛び出している)考えよう。

 その後は特にたいした話もせず、やっぱり飲みながららくがきでケイ(撮影)は気の赴くままにシャッターを切りまくっている。不思議なもので全然飽きないというのが凄い。新潟に入りだんだん日も落ち始め、これぞ醍醐味という感じになってきた。第一回目の夕食アナウンスが流れる頃には部屋の電気を消し、ひたすら大窓から沈んでいく太陽を見ていた。残念ながら時期が少し早かったので日本海に沈む夕日は見えなかったが、建造物に邪魔されつつも結構素敵な気分になった。一応カメラを構えてはいたがあんまりシャッターを切る気にもなれず、そんなのは全部ケイ(撮影)に任せた。……ま、手を動かすと浪漫ボタンに触れそうになるのが気になったが(笑)。

 上手く写真には撮れなかったので描いてみた。こういうときスケッチは便利。

 19時半から夕食予約。フレンチコース。外はもうまっくらというか、車内が明るいので当然見えない。手元でいくらか明かりを調節できるようになっていて、意味なくカーテンの上げ下げしてた。ちゃんとメニュー書いた紙も載ってるし、本気のコースだ……久々。とりあえず一人暮しではなかなか食えない。ただちょっと困るこの洋食コースというやつ。テーブルマナーは心得えてる。が、個人的大問題として、ナイフが右手で使えない。鋏程度なら右でもつかえるのだが(というか右で使わないと仕方ない場合がほとんど)、包丁その他刃物は全て左手の管轄。右手で刃物を持ってそれをものに当てて引いて斬る。これができない。ビックリするほどできない。なんで世の中はマイノリティに優しくないんだと顔で笑って心で涙。せっかくだからがんばろう! と思ったが……。
「……ごめん。いつもみたいでいいか?」
「うん」
 ありがとうケイ(気配り)。大体そういうコース料理を食べる時は自分が左利きで刃物だけはとにかく左手だということを知っている人物ばかり。無作法はわかっているがこればっかりはもうどうしようもないのでいつも一言断っている。……あんまり親しくない人と洋風コース食べる時とかどうしよう。いや、そんな心配なってからしろ。

 白ワインを頼んでみた。ウェルカムドリンクで頼んだ赤白は、赤が苦めで白が甘いという不思議に逆転仕様だったが、今度は普通に白! という感じだった(どんな感じだ)。で、最後に紅茶。ティーカップを眺める。うん、ロゴ可愛い。一口飲んでみる。飲み口部分、ちょっと厚めか。列車の中で使用に耐えるにはやっぱりこれぐらいの厚みは必要なのか。ニ客五千円……。確かに奥様たちと茶会するときには、コーヒーカップ、湯のみ、ティーカップ三種一つずつが出る状態を改善はしたい。ロゴも可愛い(二回目)。ああああ、明日の朝まで悩もう。
 部屋に戻ってまた電気を消す。の、前になんとなくソファをベッド仕様にしてみる。だが荷物をこれでもかという勢いで広げていたので、まずそれを回収。全部どけた後、終了といいながらソファに転がっておくのはお約束。もちろん怒られた。悔しいから私がスイッチを押す。椅子とかをギリギリまで横に寄せておけっていわれたが……おお、確かにそんな感じだ。で、セミダブル程度のベッド出現。やっぱりとりあえず斜めに転がって、
「あんたは椅子で寝なさい、私は斜めに大の字で寝るから」
「知るか」
 いい返事だ。
 電気を消して外の景色を見る。ずっと日本海側海岸沿いを走っていて、波頭が見えるときもある。漁船の明かりとかそういうのも見えて、なんかそれだけなのにワクワクしたりする。ついでにベッドの上で転がってみたりして、ふと通路側に作られている窓の下に頭を持っていく。カーテンはしているが光が入るところに目を移動させるとと外がよく見えた。ん? てことは、通路から覗き込まれたら目が合うということか。確かこっち側はスモークガラスじゃなかったもんな。とりあえずケイ(実験台)にとりあえず転がって置くように命令して外に出てみる。覗き込む。不気味な瞳と目が合うかと思ったら鼻だった。

 結論:キモかった。

 やっぱり怒られたが。

 そーゆーバカな事をしているとプレアデスがパブタイム仕様になったと放送が入る。せっかくなので、飲みはしないが顔を出そうということでテコテコと。何人かが寛いでたのを横目にサロンカーまで。昼と違ってほとんど人がいない。2、3人がしゃべったりしている程度。開いていた席にボーっと座る。壁と平行に作られている座席だが、通常の電車と違うのは窓に寄りかかれる位置に席があるということ。ちなみに昼座っていたのはテーブルセットがあるほう。
 何を話すでもなくぼんやりと外を見ていると、端に立っていたちょっと年上のご夫婦がどこかに消えていき、代わりに若いあんちゃんが出てきた。あ、そうか。公共シャワーの順番待ちか。そういやシャワー浴びてないことに気が付いて部屋に戻る。戻る時にはプレアデスを通るわけだが、既にパブタイムが終わりスタッフが撤収作業中。なんかデブリーフィングの最中を通ったようで申し訳ない。あのサロンカー、A寝台にいる人間にはそれほど恩恵があるわけじゃない感じかな。だから食堂車挟んでるんだろうと思われる。
 シャワーは洗顔、トイレと兼用。お湯は連続使用20分まで。ちなみにスイートだと25分。これを過ぎるとまたお湯が溜まるまでしばらく待たないといけない。しばらく体に当てないようにシャワーを出し、トラベルセットからシャンプー&コンディショナーをもってきていたのでそれを台に配置。トイレットペーパーの入っている格納庫の扉は閉めたか? 体を擦るためのタオル準備はOK? 某執事のよーなことを思いながら体を洗う。が、そこは走行中の列車、揺れる揺れるw 中に手すりがついているのを掴むがやっぱり揺れる。足元が濡れてるってこういうときつらい。でもまあ特にヤバイ事態にもならず終了、交代。備え付けのパジャマがあるのでそれを着る。室内音楽は、持ち込んだやつではなくてクラシック室内放送。ドヴォルザーク特集らしく、新世界がフルで流れてた。北海道初めてじゃないけど本当に新世界に行くような気分。列車の旅って凄い。卓上のランプだけを光度落としてつけて外を眺める。非現実極まりない。でもちゃんと現実を生きてるから、ときどきある非現実が印象に残るのかな、とか。

 夜を撮ってみた。基本、夜でもフラッシュはたかない。

 11時半ごろ秋田駅に運転停車。さすがに外に出る気はなかったが駅名が見えたので撮ろう……と思ったが失敗。無情にも列車は進み始める。またしばらく話をしつつ、とりあえず3月8日は終った。

  3月9日に続く