最近ずっと調子が出ず、その日は見張っていた間者に逃げられて曹長に拳骨付きで叱り飛ばされた。その後も牢の見張りをするはずだったのが、どうしようもなくうなだれているのを見かねたか、同僚が空港の警備と代わってくれた。
 そんなわけで、そこにホルストがいたのは本当にたまたまである。外に出ても気分は晴れず、もともと気が利くタイプではない彼は、周りから与えられる若干の非難にまったく気が付かずに案内板のど真ん中に立っていた。
「はぁ……。なんか、ダメなんだよな……」
 それほど重要視されていなかった囚人とはいえ、自分の気の緩みが脱獄を招いたことは間違いない。気を張っていれば張っているほど空回りしている。
 ため息をつきながら見るともなしに案内板を眺めていると、隣からどこかで聞いた声が聞こえてきた。ホテルの位置を見ているようで、なんとなく目をそちらにやれば。
「あっ! もしかして!」
 忘れようもない。帝都では皆無な武人の気配を持った女性。いや、帝国中でもそれほど居はしない。少なくとも、彼の故郷には居なかった。
「シュバルツ大尉殿!」
 城内の襲撃騒ぎで活躍し、負傷すれども治り、颯爽と故国へ帰っていってしまった、異国の士官。
 相手は不信そうな表情で彼を見ているが、何か思い当たったのか寄せられた眉根が少し元に戻る。
「……ええと……」
「自分はホルスト・ヴァイス上等兵です!」
「あの、ホルストか?」
「はい!」
 わずかでもこの人の記憶に残っていることができた。それがうれしくてついつい大声になる。周りが何事かとざわめいたことに気が付かない。
「本日はどうされたのですか!? ご公務ですか!?」
「こっちに来い」
 困った顔で引っ張り寄せられた。どきりとしたものの結局はなんともなく、それどころかたしなめられる羽目になった。またやってしまった、と思いつつも、もう会えないと思っていた相手に思いがけず再会し、先ほどまで沈んでいた気分が明るくなる。荷物を持って歩く背中を眺めながら、傍目から見ても不気味なほどににんまりと笑い歩哨を続けるのだった。

「だからさ、ほんとだって。シュバルツ大尉殿に会ったんだよ俺!」
 兵舎に戻っての食事時。大して美味ではない食事だが、厳しい訓練で失われた栄養を補充するため、体は貪欲に求めてくる。だからこそ普段は文字通り食事を一気に流し込み、お代わり争奪戦が繰り広げられる。それほどに激しい喧騒の食堂が水を打ったように静かになった。
「……本当なんだな?」
 誰かがスプーンを置く音をさせながら伺う。
「空港で! 観光、とおっしゃってた!」
 得意げに話すホルストに少しずつあたりがざわめきだした。
 現在の時間帯、食事をしているのはほぼ全員ユリアの舞をみた兵たちである。多かれ少なかれユリアのことは覚えていて、今でも就寝前のわずかの時間に話題に上がるほどだ。
「そりゃあんな人帝国に居ないから、みんなの心に残るわけはほんとわかるよ」
 一口、少し煮込みすぎたスープを口にしながらオットーがつぶやく。
「殿下も気にしてるみたいだし」
「殿下ってどの殿下だ」
 ホルストの向かいで、原型をとどめていないほど型崩れした野菜を卵と混ぜていた兵が口をはさむ。
「オリヴァルト殿下。あの方は一時リベールに行ってたじゃないか。あの時知り合ったんだってさ」
「オリヴァルト殿下が気にしてるってことは、やっぱりちょっかい掛けられたんだろうな、大尉殿」
「間違いないだろうな。殿下は美人に目がないから」
 それは自分たちも同じだ、と大笑い。
「俺たちは見たことないんだが、そんなに美人なのか?」
 別のテーブルから、ユリアにあったことのない一団が声をあげた。
「おまえ等はいいよな。そうやって共通の話題があるし」
「何であの日非番だったんだろう僕……」
 ため息がその集団を包む。
「機会はあるだろ。なんせ今帝都に居るんだから」
「明日の巡回のときに気をつけてみるかー」
「ぜってぇ教えてくれよ!」
 大騒ぎである。注意してはずの回る伍長まで身を乗り出す始末。いつもならすぐに終わる食事が終わらず、次に控えていた食事待ちの兵たちに指摘されて慌てて残りをかきこむのだった。

 皇城でそんな騒ぎになっていたとは夢にも思っていないユリアは、せっかく来たのだから帝都観光でもしようと外に出た。土産のひとつでも買えたらいいと考えている程度で、ほとんど目的らしい目的はない。目抜き通りらしき場所に立ち並ぶ露店を冷やかしながら歩いていると広場に出た。
 大きな噴水には華麗な装飾が施され、刻々と噴出す水の形が変わっていく。はじめは一本、太く高く天に向かって噴き上げたかと思うと、次の瞬間には広いが低い円を描く。そして、そんな噴水の前では楽器を抱えた旅芸人らしき数人が、道行く人の耳を和ませている。音楽には疎いユリアだが、楽しそうに演奏する一座を見ていると自然に頬が緩んだ。
「お姉さん、一曲どう? なんでもリクエストは受けるよ」
 一人が近寄ってくる。どうしようかと考えたが、財布から硬貨を数枚取り出して、心得たとばかりに差し出された帽子に放り込む。
「『あの空を越えて』。大丈夫か?」
「了解さぁ。みんな、こっちのイキなお姉さんの為に一曲やるぞー!」
 帽子を振り回しながら残りに声をかけ自分も定位置につく。ユリアにウインクを送ってから楽器を構えた。
 それまでミュラーの笛でしか聞いたことがない曲がいろいろな音で奏でられる。それはそれでいいものだなと思っていると、噴水周辺に人が集まりだした。
「懐かしいわ。旦那もよくリクエストしてたっけ」
 中年女が買い物帰りの荷物を抱えてつぶやく。
「きれいなきょくだね、パパ!」
「ママも好きなんだぞ」
 父子連れがにこにことやり取りをする。
「……」
 いつのまにか陽気なアレンジがかかって、寄ってきた子どもたちが周りを踊る。
「音は、自由なものなのだな」
 王城に出入りする音楽家たちは「こうであるべきだ」と主張をよくした。時には城のエントランスで大喧嘩を始めたこともあった。理由は、音楽的見解の相違、だそうだ。ユリアにとってみればまったく理解できない次元であり、むしろ他の人間たちの迷惑になっている分だけ嫌悪を覚える。そんなことが繰り返されるので次第に音楽にはかかわらないようになってきたのだ。
 けれど今、あたりの人間と一緒になって楽しもうという心が手にとるようにわかるこの状況で、少し考えが変わった。
「そういえばミュラー殿も、演奏しているときはとても穏やかな顔だった」
 一度だけ間近で聞いた恋人の演奏。聞けば、ほとんど滅多に演奏することはないらしい。オリビエですら舌を巻く笛の音を聞けた自分が少し誇らしかった。
「はいよみなさん。ちょいと静かにな」
 浸っているところに無粋な声が割ってはいる。演奏も止み、今度は声の主が注目の的になった。帝国兵の集団だ。ただし、その風体はごろつきといっても過言ではないほど乱れている。
「ここは演奏の場じゃねーんだ。散れ散れ」
「え? 半年くらい前には自由に演奏していいって言われたぞ」
 旅芸人が食って掛かる。
「馬鹿が。そんな昔のこと、今に通用するか。さっさといけよ」
「……」
 黙り込んだ相手に手をひらひらと馬鹿にするように振り、周りにも視線を投げかける。係わり合いになりなくないとばかりに周囲の人間は散っていった。
「おまえらもいけ」
「……帝国もちったぁマシになったかと思ったが、テメェらみたいなのが兵隊やってるんだ、たかが知れてる。おいみんな、さっさとこんなところ引き払おう」
 吐き捨てて仲間に声をかけた。振り返ったその瞬間に相手をしていた兵が後ろから芸人を殴り倒した。悲鳴が上がり、他の巡回兵たちが寄ってくる。誰が何をしたのかを見て取ると目に見えて嫌そうな顔になった。
「……貴様ら。いったい何をした?」
「自分らにケチをつけた人間がいただけですわ」
 ごろつき兵の一人がいい、のこりが大笑いする。そんな様子を見ながら、口を出そうとする自分を抑えユリアは殴られた芸人を介抱する。兵たちの問題は兵たちでどうにかするものだ。自分は門外漢であり、口を出すべきことじゃない。そう言い聞かせながら。ものすごい音がしたがそれほどひどい傷は負っていないようなのが幸いだ。ところが。
「なあ姉ちゃん。俺らは何にも悪いことしてないよな?」
 ニヤニヤ笑いながらユリアに話し掛けてくる。その笑いがなければそれなりにしっかりした造作のようだが、と少々場違いなことを考えた。
「な?」
 重ねて問うてくる。無視して介抱を続けていたが近寄ってこられて肩に手を置かれた。反射的にきつく振り払う。
「あ?」
「見知らぬ人間に触れられて気持ちのいい人間はいない、と思うがどうだろうか」
 つぶやいてユリアは立ち上がった。
「私の目が悪くないのならば、この人のほうが、何も悪いことをしていないが」
 間違ったことを言ったか? とそれまで抑えていた気配をあらわにする。事情をしらない後から来た上級兵がその濃さに半歩引く。
「……っ」
 ごろつき兵たちも何もいえない。烈火の怒りを見せられ足がすくんでしまっている。ややあって三々五々逃げ出してしまった。
 眉をひそめその背中を見、また芸人に向き直る。頭を抑えつつもしっかりと笑い返してきた。
「お姉さんすごいね。あんなタチ悪そうなの追い払っちまうなんて」
 連れに肩を貸してもらいながら立ち上がる。
「大丈夫ですか? 楽器を弾くのに支障は?」
「すぐに立ち直るよこいつなら。時々あるんだこの街じゃ。俺らの中で一番血の気が多いからいつも怪我してる」
 軽く笑って、すぐその笑みを消してユリアから視線をはずす。
「けど、あんなごろつきとかわんないような兵なんかいる国なんか、ろくな国じゃないよな」
 上級兵がそれを聞いて手を上げかかるがかろうじて耐えた。
「すまん。大々的に徴兵をはじめたのだ。試験らしい試験もないからあんなごろつきが通るし、やつらを訓練するような時間もない」
「はぁっ? あんたらまだしつこく戦争する気かよ?」
 さっさとこんな国出て行くに限る、と他の旅仲間が負傷した男の荷物をまとめてしまう。そのまま挨拶もそこそこに噴水広場から去っていった。残されたユリアと上級兵数人はあっけにとられ、やがて互いにばつが悪そうに目を合わせる。
「……あの兵たち、せめて軍装くらいきちんとするように指導しては?」
「そうしてやりたいのは山々だが、権限が及ばんのだ。宰相殿のてこ入れでできた遊撃部隊だとしか、われわれも知らされておらん。おかげで言うことも聞きやせん」
「……宰相殿、ですか」
「宰相殿直属だということでな。自分らとは違う命令系統だ。……ところで」
 おもむろにユリアに笑いかける。
「貴殿は名のある方とお見受けしたが。あの気配はそうそう誰もが出せるものではない」
「単なる通りすがりですよ」
 応じて微笑み返し、一礼してその場を辞す。近場に小間物屋が見えたので気分転換に入ってみた。
 しばらくして出てくるとなにやら妙な感じがした。自然と体が警戒態勢に入る。だから、突然背後から羽交い絞めにされても特に驚くことはなかった。その無反応さに羽交い絞めにした男のほうが拍子抜けしたようだ。
「少しはできるかとおもったが結局女は女か。羽交い絞めにされたら動けないってか?」
 下卑た笑いが聞こえてくる。どうも先ほどのごろつき兵たちのようだ。そのまま人気のない林に連れ込もうとする。わずかに力が抜けたのを見計らって羽交い絞めにした男を投げ飛ばした。
「!」
 取り巻きは驚いてユリアを見つめる。投げ飛ばされた男も呆然としていた。
「さっきも言ったが、見知らぬ人間に触れられて気持ちのいい人間はいない、と思うが」
 肩口を手で払いながら視線を向ける。
「何しやがる!」
「何といわれても。嫌なので離れてもらっただけだ。少し手荒だとは思うがそうしないと離れてくれそうになかったので」
 両肩を回しながら応じる様子にいらついたのか取り巻きの一人が飛び掛ってくる。だがその動きは直線的で、難なくよけることができた。ひらり、ひらりと立ち位置を変えながら男たちをあしらっていく。時に自分を捕らえそうになる拳があれば、逆に掴んでバランスを崩させる。
「キャーっ!!」
 女の悲鳴が聞こえてきた。いつのまにか人が多いところまで来ていた。それを聞きつけてまた巡回兵たちが集まった。
「お、おい、この女、タダモンじゃねえよ。こんなとこまで引っ張ってきやがったぞ」
「うるせえ! とにかくボコボコにしてやらないと気がすまねぇ!」
「……」
 ありきたりな罵声にユリアは思わず巡回兵を見た。先ほどと同じその兵はあきれながら頷く。見届け、ごろつき兵に向かって一歩踏み出す。押されて引くごろつき。だが引ききる前に女のほうが目の前にたどり着いていた。
 とっさに腕を突き出すがそのときにはその位置に居らず身を屈めていた。たった一撃だけ腹部に拳を入れる。急所を的確に突いた一撃で男は後ろによろめく。音を立てて仰向けに倒れた男の前に、兵のホルスターから抜いた銃を持ったユリアが立っている。しばしそれを見やっていたが、振り向きもせずに後ろにいる巡回兵に投げた。
「で?」
「そうだな。流石に命令系統が違うとはいえ、自分たちの目の前で一般人に危害を加えるところを見たとあれば、連れて行かざるを得ないな」
 うれしそうに巡回兵たちが近寄って、観念した様相でうなだれている遊撃部隊の一員という兵たちを拘束していった。
「すまんが貴殿も一応来てくれるか。気持ち的にはこいつらだけで十分なんだが、役目的にそういうわけにもいかんのでな」
「心得ている」
 嫌というほどな、と手のひらをひらひらさせて兵たちの後についた。

 皇城に近い建物を巡回班の詰め所に使っていて、一室の窓からは皇城が見えた。なんとなくそれを視界の端にとどめながら淹れてもらったコーヒーを飲んでいた。
「やはり只者ではないと思っていましたが……」
「今は単なる観光中の異邦人です。なるべく内密に」
「いや、それは難しいです」
 怪訝そうに首を傾ける。
「自分の同僚が昨日騒いでいたのです。そうか、貴殿が……」
 うんうんと頷いて巡回兵が目を向けてきた。
「あー……」
 どう答えて言いかわからずにコーヒーを飲み干す。
「そろそろホテルの門限が……」
「おお、申し訳ありません。あいつらのことはお任せください!」
 敬礼をされて、仕方なくユリアも敬礼を返した。部屋から出るとあちこちから視線を感じる。いっそ出てきてくれたほうがいいと思いながら詰め所を後にした。
 少し買い物をしようと思って店に入るも、結局疲れ果てて早めに切り上げホテルに戻る。ロビーで鍵を渡してもらっているときに、たずねてきた人がいるといわれた。
「こちらの喫茶室で待っていただいています」
 案内されるとそこにはオリビエとミュラー。渋面の幼馴染の横で、いい気分で一杯やっている様子が見えた。
「……え」
「やあ。ボクに秘密で帝国訪問なんて、寂しいじゃないか」
「あ、申し訳ありません」
「うーん、キミの美しさに免じてこの場はボクに酌をしてくれるということで許してあげよう。ほらほらここに……ってゴメンナサイ」
 ミュラーがじろりとオリビエを睨んだ。
「あの……」
「聞いてるよ、今日の公園の件。城の兵たちが妙に落ち着きがなくてさ。ミュラーの巡回ついでにボクも詰め所に行ってみたらキミの話がでて。もうすっかり有名人だね」
「そんなつもりは、なかったのですが」
 勧められた席に腰を下ろして、困ったとため息をつく。幸いなのは、喫茶室に他の客がいないことだ。
「仕事をしろと言っても聞きやしない。俺は自分の仕事を全うしたいだけなのだが……」
「なんだいミュラー。ホテルに行くと言ったらすごくうれしそうにしたのは誰だね」
「……さっさと帰るぞ!」
「キミだけ先に帰っても大丈夫さ。だってここにはキミに勝るとも劣らない腕の持ち主がいるんだし」
「……」
 立ち上がりかかったミュラーは音を立てて椅子に座りなおす。その様子を見て肩を震わせていたが、やがてユリアに向き直った。
「今回は普通に観光なのかい?」
「ええ……そうでもあり、用事もあり、というところです」
 どこまで言っていいのかわからないので少しごまかす。
「……冷静に見えるけれどユリア君は結構情熱的なんだね」
 なにやら勝手に得心したようで、にんまりと笑い何度も頷いている。何か違うことを考えていそうだがとりあえず気にしないことにした。見ればミュラーも同じようなことに行き当たったようで、額に手をやり顔をしかめていた。
「このままずっと歓談していたいところだけど、あまり長居すると皇城の門限に引っかかってしまうのでね。流石にボクが締め出されたりしたらいろいろ示しがつかないから、いったん帰ることにするよ。ユリア君はいつまでいるんだね?」
「あと五日ほどは滞在予定です」
「だってさ、ミュラー」
「そこでなぜ俺にふる」
「当然の行動さ」
 グラスの中身を飲み干して立ち上がった。そのまま三人そろって喫茶室から出て行く。と、オリビエが振り返った。
「何号室だい?」
「204です」
「じゃあ、そこに届けるようにする」
「?」
 何を? 口に出す前に金髪の青年は笑った。
「ほら、いつかウチで晩餐会に出てくれたときに着ていたあのドレス。同じものじゃなくて少し型は変わるけど、あれは良く似合っていたよ。それに、兄弟だからやっぱり趣味は似ているんだね、ヨハネス卿も白が好きなんだ」
「!」
「オリビエ……」
「皆まで言わないでくれよミュラー。気に入ってもらいたいだろ?」
「それはそうだが」
「だからひとつ約束。せっかくだから、ボクもいるところで逢ってくれないかな? 目の保養をしたいのだよ」
 どこまで冗談でどこまで本気なのかわからない。けれど、それこそがオリビエだ。頷き、並んで歩くミュラーにそっと耳打ちをする。
「確かに、心配など無用なほど、オリビエ殿はオリビエ殿ですね」
「実体験させるつもりはなかったが……どこでかぎつけたやら」
 案外に兄が言ったかもしれないとつぶやき、先に行ったオリビエを追っていった。その背を眺め、近づいてきた目通しにわずかな恐れを感じる。仕事から離れられたのに素直に喜べないのはひとえにそこにあった。
「でも、きっとミュラー殿なら」
 自分をかばってくれるだろう。もちろん、そんな事態にならないように努力をしなければならない。
「殿下やヒルダ殿にもう少し作法を教わっておけばよかった」
 いまさら悔いても仕方がない。どうにかなるだろう、と頭を振って、自分の部屋に戻っていった。


Ende


 帝国軍の階級はどうなってるんでしょうねー。少佐は当然「Major」ですが。「メイジャー」ではなく「マヨーア」ですな、ドイツ語読みは。ホルストあたりが「Obersoldat」、ユリアさんがひっくり返したごろつき兵は「Jäger(猟兵)」でいいや。突き詰めるとホルストはもっと細かく呼び方変わるはずです。上級兵一般の呼称ぽい。ユリアさんは「Rittmeister」! といいたいところですが「Hauptmann」です。前者だと騎兵大尉。馬乗ってランス振り回すのか。それは激しく燃える。全然関係ありませんが毎度思うのは、海軍の呼称は一線を画してるということ。おもしろすぎるぞ各国海軍。
 ユリアさんは初出時は中尉で中隊長でしたが、これはほんとに異例っぽいです。中隊長には大尉がなるのが原則だそうな。少佐は大隊長。てことはフィリップさんと同等か。
 話のあとがきにまったくなってませんなぁ(をい)。

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